STORY

人工知能(AI)に勝つ仕事 元エンジニアが目指した写真の世界

20年前はロボットや半導体設計などに関わり、最先端のIT技術を目の当たりにしてきたという田川 新二郎さん(44)。人工知能(AI)の進化に驚きながらも、AIには超えられない仕事があると信じてフォトグラファーを目指したという。今ではフォトグラファーを「天職」だと話す田川さんに「人が撮る」ことの意味と魅力を聞いた。

AI時代にも淘汰されない「芸術家」という仕事

Qカメラに出会うまでのことを教えてください。

大学卒業後、4年間ほどプログラミングの仕事をしたりパソコンのインストラクターをしたり、いわゆるエンジニアの仕事をしていました。私が大学を卒業した2000年ごろというのは、世の中がまさに「IT革命」の真っ只中だったということで、これからが期待された活気ある業界でした。

ロボットのプログラミングや半導体の装置設計など世界最先端の仕事に関わり、充実した毎日を送っていましたが、新しい技術を目の当たりにすることで、ある不安を抱えるようになったんです。今の時代では当たり前のように、人に代わってAIが活躍する時代になってきましたが、これからAIが進化していけば、「エンジニア」という自分たちの仕事ですら淘汰されてしまうのではないだろうか…という不安を抱えるようになったんです。

Qエンジニアからのフォトグラファー…なんの接点もない仕事のように思うのですが⁈

「エンジニアの将来が不安だからフォトグラファーに転向しよう」なんて簡単な方向転換ではありませんでした。

他に自分に向いている仕事があるのだろうか…そう思った時に、たまたまネットで見つけた「適職診断」を受けてみることにしたんです。

すると診断には「画家やフォトグラファーなど、芸術性の高い仕事が向いている」と書かれていました。その時に、「これだ‼︎」と思ったんです。

どんなにAIが進化しようとも、きっと芸術性の高い仕事はAIではかなわないこともあるだろうと、芸術系の仕事に興味を持つようになったんです。

僕を育ててくれた場所、そして伸ばしてくれた場所

Qえええ⁈ ネットの適職診断がきっかけだったんですか?

そうなんです。そこで一念発起してフォトグラファーを目指してみることにしたんです。当時は27歳、未経験のフォトグラファーとしてはギリギリの年齢だったと思うんですが、熊本にある出版社に採用してもらいました。

未経験にも関わらず、フォトグラファーとして育ててもらいましたから、とても恵まれた環境だったなと思います。

今ではフォトグラファーの仕事が「天職」だと思えていますから、不思議な出会いですよね。

Qフォトグラファーデビューの頃のお話を聞かせてください‼︎

ファッション雑誌の撮影を担当するようになったので、まずは「物撮り」と呼ばれる商品撮影からスタートしました。

当時はフィルム撮影の時代だったので、翌日にならないと写真の出来栄えが分からないという緊張感の中で、レフ板や照明などの基礎から徹底的に教わりました。

今はデジタルの時代ですから、モニターで画像を確認しながら微調整をして撮影できますが、フィルムカメラではそんな撮り方もできません。失敗もしましたが、その一つ一つが経験となっていますし、デジタルに比べて1枚の写真の重みを感じながら撮影していたと思います。

初めて自分の撮った写真が雑誌に掲載された時は、本当に嬉しくて、今でもその雑誌を大事に残してあります。

Q雑誌撮影で経験を積まれたんですね‼︎ スクールフォトとの出会いについても教えてください。

出版社を経験した後、少しステップアップしようと思って、福岡のスタジオに入れていただきました。大手の広告代理店と取引のあるようなスタジオだったので、色々な撮影技術を学べるようになって充実した毎日を送っていました。

フォトグラファーとしての経験も積んできて、他の分野の撮影にも興味を持つようになってきたのもこの頃です。

昔から子どもが好きだったというのもありますが、色々な分野を調べていくうちに「スクールフォト」という分野も知ったので、撮ってみたいなと思うようになりました。それで、いくつかのスクールフォト会社に

フォトグラファー登録するようになったんです。

Qそこでリンクエイジと出会ったんですね‼︎

リンクエイジとのお付き合いは、気づいたら十数年経っていました。こんなにも長きに渡ってお付き合いできる会社は他にはないんじゃないでしょうか。

リンクエイジの良いところは、フォトグラファーが担当園を持てるというところです。良い写真を撮る上で、園や子どもたちとの信頼関係は大切ですから、足繁く同じ園に通わせてもらえるというのはありがたいことです。

また、フォトグラファーへの信頼も感じます。会社によっては、細かな指示があったりと撮影方法にも決まり事が多かったりするのですが、「この園ではこう撮りたい‼︎」というフォトグラファーの思いも受け止めてくれていて、フォトグラファーを信じてくれる寛大さのある会社だなと思います。リンクエイジで働いているフォトグラファーは伸び伸びと撮影させてもらえているのではないでしょうか。この環境があるからこそ、スクールフォトグラファーとして成長できているのだと思います。

「田川さん10年間ありがとう」卒園式の撮影で僕は涙を堪えた

Qリンクエイジとのお付き合いが10年以上なんですね‼︎ スクールフォトグラファーのやりがいを教えてください。

もう10年以上通い続けている園もあるんですが、長く通わせてもらうと、子どもたちとの信頼関係が生まれるだけでなく、その先にいる保護者とも通じ合うような気持ちになることがあって、そういった瞬間は嬉しいなと思います。

例えば、運動会や発表会などの撮影があると、保護者から声をかけて下さるんです。「あの写真すごく良かったです‼︎」なんて声をかけられると嬉しいですし、「今度家族写真も撮ってね」なんて言われることもあって、そういった声を聞くと、この仕事をしていて良かったなと思います。

「うちの子らしさが出ています‼︎」と喜んでくださることもあって、「僕もいつも撮りながらそう思っていますよ」なんて話をしながら、保護者のみなさんと愛おしさを分かち合っています。

一番印象に残っているのが、ある卒園式の日の出来事です。10年間同じ園を撮影する中で、あるご家庭の4人兄弟を撮らせてもらったことがあって、一番下のお子さんが卒園する日にお母様に声を掛けていただきました。「田川さん10年間子どもたちを撮って下さってありがとうございました」と声をかけてもらって、もう涙を堪えるのに必死でした。お子さんたちの成長をご家族と一緒に見守ってこられたという喜びが大きかったです。

Q保護者の喜ぶ声を聞くと嬉しい気持ちになりますね‼︎ スクールフォトを撮る上で大切にしていることがあれば教えてください。

「保護者の喜ぶ写真を撮りたい‼︎」という思いが大きいのかもしれません。常に、どんな写真を撮ったら保護者が喜ぶかなと考えていて、現場で反応を探ってみることもあります。

イベント撮影だと保護者もいらっしゃるので、撮った写真をその場で見てもらったりして、喜んでもらえている写真なのかどうか反応を見たりします。

何度か通うとお子さんたちの様子や特徴も分かってくるので、100人のお子さんがいたら、それぞれのご家族に喜んでもらえるように、100通りの対応で撮影したいなと思っているんです。

お子さんの中には、カメラを向けると手で顔を隠しちゃう子がいたり、下を向いちゃう子がいたりしますよね…それでも、それぞれ対応を変えながら撮るというのが僕のポリシーです。照れ隠しなのか、カメラが怖いのか、その子自身に興味を持って接することで、なぜカメラから逃げているのか理由が分かったりするので、「おうちの人が見てくれる写真だから安心してね」と声掛けしたり、遠目から撮影したりしながら、子どもたちが安心できる撮影環境を作っています。

Qそれだけ配慮して撮影されているということで、ご家族に喜んでもらえる写真が撮れると嬉しいですね‼︎スクールフォト以外にも撮影されている分野はありますか?

ウェディングフォトも撮影しています。ご夫婦の感動の瞬間に立ち会えるので、感動の大きなお仕事だと思いますが、明日撮影があるとなると、前日から緊張したりしています。というのも、結婚式って流れがあって、全てが一瞬限りのシーンですから、指輪交換を撮り逃しましたとか、キスシーン撮り逃しましたでは取り返しがつかないんです。そういう意味で、撮る側も緊張感があるなという印象です。

でもスクールフォトというのは、前日の夜からワクワクしてしまうくらいなんです。

子どもたちの成長も撮り逃しはできませんが、子どもたちは「自由」だからこそ、どんな瞬間も絵になりますし、楽しい雰囲気の中で撮影できるというところもスクールフォトの魅力なのかもしれません。いつも夢中でシャッターを切っています。

AIには譲れない「ご家族の愛に寄り添う」ということ

Q田川さんは44歳ということですが、これから挑戦してみたいことはありますか?

動画撮影にも挑戦してみたいなと思っています。

実は、僕の小学生の頃の夢は「映画監督になること」だったんです。

子どもの頃から映画が大好きで、「あの映像はどうやって撮っているんだろう?」とか「この映画の世界観はどうやって作ったんだろう?」とか、撮影の裏側を考えて映画を見てきました。ですから、動画の世界にも少なからず興味があります。

ウェディングの仕事をしていると、間近でドローン撮影や動画撮影を見る機会が多いので、写真撮影とは撮影方法が全然違っていて面白そうだなという印象です。ウェディングのエンドロール映像なんて、撮影しながら動画編集もしないといけないですし、たった3分程度の動画でお客様に感動を与えるという意味では、小さな映画監督みたいなものですよね。

ゆくゆくは子どもたちの動画も‼︎ なんて思ったりもしますが、そうしたら大好きなスクールフォトが撮れないですから(笑)ちゃんと写真の腕も磨いて、これからも子どもたちの写真を撮り続けたいと思っています。

Qリンクエイジには「すべての愛を力に変える。」というミッションがありますが、田川さんにとっての「愛」について教えてください。

「ご家族の気持ちになって写真を撮ること」それが私にとっての「愛」ある写真の撮り方です。保護者にお会いすると、ご家族のお子さんへの「愛」って、本当にすごいなと思わされます。ですから、その気持ちに寄り添って撮影したいと思っています。

これはAIでは実現できないことだと思うんです。愛ある撮影ができるということこそ、人が撮ることの意義だと思います。

だからこそ、スクールフォトは辞められません‼︎

これからも、たくさんの子どもたちの写真を撮って、ご家族に喜んでいただける1枚をお届けしたいと思います‼︎

どんなに優秀なAIでもたどり着けないであろう「愛」という感情。

「人が撮る写真」が選ばれ続ける理由はそこにあるのだろう。

愛ある人間が撮るからこそ、その写真には温かさと優しさが溢れるのだ。

これから先、どんなにAIが当たり前の時代になろうとも、田川さんはフォトグラファーであることに誇りを持ち、自分にしか撮れない写真、愛ある写真を撮るために走り続ける。

Interviewee by Shinjirou Tagawa
HP:http://www.blinkphoto.info/
sinphoto3

Interview, Text by Miya Ando
miya_ando

Photo by Haruna Morimoto

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