リンクエイジのオフィスの中で目に入ってきたのは、優しい表情でパソコンに向かい作業をしている女性だ。沓内由紀さん、35歳。彼女はメモリッジの写真販売にとって欠かせない仕事を担当している。お客様へお届けする写真、その品質の最終チェックを行い、必要なものには編集を加えるという仕事なのだが、その仕事の魅力とは何なのか?沓内さんが語ってくれた。
「ものづくり」に夢中になった経験が「美術」の道に続いていた
私はフォトグラファーではありません。私の仕事は「写真の編集」です。
フォトグラファーや先生方から納品された全ての写真を確認して、販売できるものかどうか最終チェックをしています。昨今、ASP型の自動写真販売サービスが増えている中、リンクエイジではあえて人の目による写真のチェックを行っています。リンクエイジの編集スタッフには小さいお子さんがいる方が多く、保護者目線で「こんな写真があったら不安になるな」とか「こういうところ見たかったのよね」など、数字に表せないような視点や価値観を含めて写真の編集ができることが、私たちが目で見て編集を行っている理由の一つです。様々なことが自動化されていく最近のトレンドとは逆かもしれないけれど、「本当に必要な写真は何か」だったり「本当に園が伝えたいことは何か」だったりを日々学び続けているリンクエイジだからこそできるのかもしれません。
中でも大切なのが、「お客様が求めていない写真」を見つけることです。フォトグラファーが一生懸命に撮影してくれた写真は素敵なものがほとんどですが、活発的に動き回る子どもたちの姿を捉えることは難しく、どうしても鼻水が出ていたり、半目だったりする写真があります。そういった、本人やご家族が見て不快に思ったり、トラウマになったりしそうな写真を見つけて削除しています。その他にもトリミングなど、少しだけ手を加えることで「綺麗な写真」に仕上げることが私の仕事です。
まさか写真の仕事をすることになるなんて思ってもみませんでしたが、今思い返すと、子どもの頃から写真を撮ることが大好きだったので、色々な想い出が残っています。
小学生の頃は、インスタントカメラの時代でしたから、修学旅行にはインスタントカメラを持って行きました。現像した写真を手にした時のワクワクってありますよね。
中学生の頃には、両親にデジカメを買ってもらって、友だちと一緒に撮影を楽しんでいました。今思えば、デジカメを買ってもらうなんて、かなりのカメラ好きだったのだなと思います(笑)
みなさん経験があると思いますが、部屋の片付けなんかをしていると、ふと昔の写真が目に留まって、懐かしくなることってありますよね。私もよくあるんです。今でも時々写真を見返すと、その当時のことが鮮明に思い出されるので、写真って素敵だなと思います。
小さな頃から友だちと一緒にいることが大好きで、放課後に駄菓子屋に行ったり、公園で遊んだりして、元気いっぱいの子ども時代を過ごしていました。
中学生の頃はソフトボール部に入部していましたが、試合に行く時には自分のデジカメを持って行きました。部活の仲間とたくさんの写真を撮ったので、今でもうちには当時の写真が残っています。
高校生になると、書道部に入部しました。幼稚園の頃から書道を習っており、書道が大好きだったからです。自分自身と向き合いながら「作品」を残すということに面白さを感じていました。
実は通っていた高校の書道部は少しユニークで、文化祭などのイベントでは部員達で協力して、大きな筆を使った巨大な書道作品を制作していました。みんなで踊ったりもするんですよ(笑)少し前に「書道ガールズ」が流行りましたが、その先駆けといっても良いくらい昔から書道パフォーマンスに取り組んでいました。
高校卒業後は、美術系の短大に進学して美術の勉強をしました。
子どもの頃から手芸や工作などが大好きで、「ものづくり」に興味があったからです。
短大では、1年生で美術全般のことを学んで、2年生に進学する頃に、自分の専攻を選びました。私が選んだのは、陶芸や染色について学べる「工芸」を専門とするコース。ティーポットを作ったり、ティーカップを作ったりして、自分の作品を残せるということが嬉しくて、すっかり夢中になりました。
余談ですけれど、在学中に「写真の編集」について学ぶ機会もあったんですよ。デザインなどを学ぶうえで大切な要素だったので、フォトショップやイラストレーターなど、今に活かせる技術を教えてもらっていました。まさか、この頃の学びが今に活かされるなんて思いもしませんでしたから、当時の自分に会えるとしたら「しっかり勉強しておいて〜」と教えてあげたいくらいです(笑)
それが、工芸の世界というのは、なかなか狭き門で…どこか有名な先生の門下に弟子入りして修行するとか、学校に残って先生のサポートをするとか、そういった道しかないのが現状でした。とても悩みましたが、卒業後は就職することを選択して、販売や接客の仕事をはじめました。
私たちは想い出の写真に「魔法」をかけている
一番印象に残っている仕事が、大阪にある某大型テーマパークの写真撮影・販売のお仕事です。写真とのご縁を感じずにはいられないですよね⁉︎
アトラクションを待つお客様の写真をお撮りして、アトラクションの出口で写真を販売するという仕事だったのですが、とてもやりがいのある楽しいお仕事でした。
アトラクションの待ち時間の撮影ですから、必ずお客様が買ってくださるとは限らないんです。でも写真を手にしたお客様の表情が明るくなって、喜んでくださる様子を見るたびに、想い出が写真となって、手元に残るって素敵なことだなと思っていました。
今のお仕事では直接お客様の表情を見ることはできませんが、当時のお客様の様子が今でも目に浮かんできますから、写真を喜んでくださるお客様の様子を想像してお仕事しています。
私も35歳になりました。接客業は体力勝負ですから、体力面に不安も出てきました。将来のことを考えたら、歳を重ねても長く続けられる仕事をしたいなと考えるようになって、WEBデザインなどの仕事に興味を持つようになりました。
そこでWEBデザインにつながるような仕事を探していた時に、リンクエイジの「写真編集」という仕事を見つけたのです。学生時代習ったことを活かせて、かつ自分のスキルアップに繋がるなと思ったので応募しました。
今は写真編集も「アプリ」を使えば誰でも簡単にできる時代になりましたが、人が介するということに意味があると思いますので、日々のお仕事にやりがいを持っています。
写真を手にするお客様が少しでも笑顔になれるように、最後にほんのちょっとだけ「魔法」をかけるつもりでお仕事しています。ネット販売ですから、直接お客様と接することはありませんが、「お客様の喜ぶ姿を想像して、陰で支えること」それが私のやりがいです。
また、各園によって、修正のご意向が違ったりするので、園の情報をきちんと把握しながら対応しています。園ごとのご意向を理解して編集に活かすというのは、加工アプリではなかなかできないことですよね。
写ってはいけないものがあればトリミングしたり、少し斜めになっているものがあれば角度を修正をしたりと、「想い出の一枚」「最高の一枚」がお客様の手元に渡る上で、最後のお手伝いができるというのは、責任も大きいですが、やりがいのある仕事だなと思います。
もちろん大変なこともあります。普段は何千枚という写真を編集していますが、年末年始にかけては園の行事も盛り沢山なので、写真の枚数もたくさん。多い日には1日で何万枚もの写真を確認します。その枚数の多さに驚くこともありますが、不思議なことに飽きることなくお仕事できています。
それどころか、スクールフォトの編集を始めたことで、幼稚園や保育園、学校への印象が随分と変わりました。
「先生は素晴らしい‼︎」この言葉に尽きるのです。
写真に写る子どもたちの表情を見ていると、みんな良い表情をしているんです。
夕涼み会に、ハロウィン、クリスマスに発表会など、先生は、子どもたちのためにたくさんの行事を準備していらっしゃいます。それだけでも素晴らしいなと思うのに、日常の子どもたちの表情を見ていると、とっても生き生きとしているんです。この表情を作り出しているのは、他の誰でもない、先生なのだなと思うと、その存在の偉大さに尊敬しかありません。
先生たちへの尊敬は、それだけではないんです。 プロのフォトグラファーの写真だけではなく、先生の撮影した写真も編集させてもらっているので、その撮影力にも感心することがあります。
子どもたちの笑顔の感じがとても自然体で、プロでも撮れないなという瞬間が撮れていることもあって、「この写真、素敵だな‼︎」「先生はすごいな‼︎」と感動しながら写真を拝見しています。裏方の仕事はカッコいい‼︎そこには、主役の笑顔を輝かせる「愛」がある
笑顔を作ること、それが私の愛だと思います。
とにかく、私は笑顔でいることが大好きなんです。友達や家族、自分が関わっている人、みんなが笑顔で過ごしてくれていれば、本当にそれだけで幸せだなと思います。
そういった意味では、写真を手に取ってくださるお客様も私の人生にとって大切な方々ばかり。
私は趣味で野球を見に行ったり、好きなアーティストのコンサートに行ったりするんですが、裏方の人たちの仕事を考えたりするのが好きなんです。主役を引き立たせるために、たくさんの人が関わって、サポート役をしていると思うと、黙々と裏方に徹するのもカッコいいなと思います。
私の仕事は、決して表舞台に立つ仕事ではありません。でも、私が関わることで「主役」である子どもたちの笑顔がより輝くのであればと思うと、このお仕事も愛のある仕事だなと思っています。
まだまだ写真編集を始めたばかりなので、これからもたくさんの人を笑顔にできるような仕事をしていきたいなと思っています。
そして、いつか「自分の作品」で誰かを笑顔にできる日が来れば嬉しいなと思います。「笑顔」こそ「愛」だと語る沓内さん。
その笑顔から、どれだけたくさんの人が愛を受け取ったのだろう。
彼女は知っている。「笑顔」は表舞台だけのものではないということを。
陰で主役を支える人たちにも、表舞台に負けない程の愛に満ちた笑顔がある。
写真を手にした誰かが、笑顔でいてくれるように願って、
彼女は今日も、その一枚を大切に、
「編集」という名の愛の魔法をかけ続けている。