STORY

フォトグラファーの愛情表現は「写真」に愛を込めること

家族想いで誠実な生き方が印象的な中島敏晴さん。小学生の頃に出会ったカメラが長年の趣味になり、あることがきっかけでプロのフォトグラファーを目指して歩き始めたという。驚きの決断の中で、家族のために選んだ「ある計画」とは…その全てを語ってくれた。

「この写真を撮った子は磨けば光る」その言葉が心に眠っていた

Qカメラとの出会いについて教えてください。

小学4年生ごろから、カメラ好きの父の影響で撮影するようになりました。電車が好きだったので、「電車の写真を撮りに行きたい」とお願いしたことがきっかけです。

父は当時から一眼レフを使っていたので、余分に持っていたカメラを使わせてくれるようになりました。フィルムをセットして、巻き上げて……という工程から教わって、子どもながらに、撮った写真が出来上がるのが楽しくて、カメラが遊び道具のようになっていたと思います。

Q小学生の頃からカメラを!? お父様との良い思い出ですね。

フィルムが必要になると、父からお小遣いをもらって、近所のカメラ屋さんにおつかいに行くこともありました。店員さんと「今日はここのメーカーのフィルムにする??」なんて話をすることもあって(笑) 今では良い思い出です。

自己満足の世界ですから、気に入った写真を貯めていくんですが、露出調整なんかもオートではないので、時には、全部真っ白とか真っ黒の写真もあって! 小学生ながらに、なんで白くなるんだろう…とか考えて撮影していました。カメラ屋さんに相談して「ここをグルグル回すといいよ〜」と教えてもらうこともありました。

Qそれはなかなか探究心のある小学生でしたね!! その後もカメラを続けてきたのでしょうか!?

ずっと趣味で続けてきました。年齢とともに、撮るものも変化してきて、20代の頃には釣りの撮影に夢中でした。どちらかというと、釣りがメインでカメラはおまけでしたけど(笑)

友人から、釣り雑誌に載せるための写真を頼まれたこともあるんですよ!! 当時の雑誌には、色や明るさがそのまま映し出される”ポジフィルム”で撮影するというルールがあったので、雑誌に載るような釣り人はプロの専属フォトグラファーを同行させることが多かったんです。

ポジフィルムは、露出を一発で狙って撮らないといけないので、失敗したらアウト。とても難しい撮影ですから、僕のような素人が撮るのは異例だったと思います。

Qなんと、アマチュア時代に釣り雑誌の写真を!? 面白いご経験ですね。

自分の撮影した写真が雑誌に載るのもいいものだなという経験をしました。

僕の撮った写真を見てくださった方から「プロを連れて行ったのかと思ったよ」と言われた時は、嬉しかったですね。釣り関係者の有名な方だったんですが、「この写真を撮った子は、磨けば光るよ」とまで評価してくださいました。

あの言葉がなければ、今はなかったかもしれません。心の中にずっと残り続けてきましたし、今思えば、深い意味のある言葉だったなと思っています。

家族に心配はかけられない! 僕は「ある計画」でプロを目指した

Qでは、その後はプロのフォトグラファーとして活躍されてきたのでしょうか。

卒業後は会社員として働きながら、趣味でカメラを続けていました。

結婚して子どもが生まれてからは、子どもを撮る機会も増えました。子どもの通っていた保育園では「写真係」のボランティアにも挑戦しました。カメラが好きだったので、迷わず立候補しました。これがスクールフォトとの出会いになります。

販売こそしませんでしたが、撮影した写真をプリントアウトして、保護者の手に渡すまでの全ての工程を経験することができました。そして何より、保護者に喜んでもらえるという経験ができたことは、僕にとって”成功体験”になり、写真の楽しさを再認識する良い機会になりました。

プロのフォトグラファーになることを意識するようになったのは、その頃からです。

Q会社員からプロのフォトグラファーへのシフトは、スムーズにできたのでしょうか。

フォトグラファーは撮影がなければ食べていけません。急に会社員を辞めてしまうと、家族を路頭に迷わせてしまいます。

プロのフォトグラファーになりたいと打ち明けた時、反対こそされませんでしたが、妻も不安が大きかったみたいで。

大切な家族の理解なしには進めることはできませんから、家族が安心できるように、長期的な目標を立てて、安全な範囲で徐々にシフトできるように計画を進めてきました。

実は今もその計画の最中なのです。より時間に融通のきく会社に転職をして、フォトグラファーの仕事と両立させながら、いずれカメラだけで生活できるようにと考えているところです。

Qご家族に安心してもらえる計画というのは大事なことですね。ご家族の理解があってこその挑戦ですね!

プロのフォトグラファーに挑戦し始めて3年が経ちましたが、家族の反応も少しずつ変わってきたように思います。

家族が前向きに捉えてくれるのはありがたいことです。妻も「頑張ってね」と背中を押してくれるので、僕自身も「やるしかない」という思いになります。

今では、子どもたちもカメラを大好きになってくれました! 小学生の娘はスマホで撮影を楽しんでいますし、中学生の息子はカメラ好きの少年に育ちました。

実は、僕の父が使っていた一眼レフを息子が使っているんです。

父は数年前に他界してしまったのですが、”このカメラは孫に…”と決めていたようで、息子が受け継いで使っています。

Qお父様のカメラを息子さんが受け継がれているんですね。「カメラ好きの少年」とは、ご自身の少年時代と重なりますね。

休日には息子の撮影に同行することもあります。息子の撮りたいものは、動いている電車の流し撮りや、夜間の長時間露光の撮影など、技術的にも難しいものだったりするので、撮り方を教えることもあります。

今思うと、僕自身も父と同じことをしているのかもしれません。父は寡黙な人でしたが、いつもやりたいことは応援してくれましたし、「やるなら最後までやり遂げなさい」という人だったので、そういう想いも受け継いでいきたいです。

数秒先を「予測する洞察力」これはプロの技術

Qカメラが親子の時間を作ってくれていますね。リンクエイジとの出会いについて教えてください。

子どもの写真を撮りたい! という思いがあったので、スクールフォトで求人を探してリンクエイジを見つけました。ホームページや求人の内容に共感することが多くて、他社と比較するというよりも、リンクエイジで働きたいという気持ちで応募しました。

年齢的なことを言えば、50歳からの挑戦でしたので、不安もありましたが……プロ未経験からでも挑戦させてくれて、個人的な想いもしっかりと汲み取ってくれるリンクエイジには、感謝しています。

Q撮影現場で大切にしていることはありますか?

大人、子ども関係なく、出会う人たちのことをリスペクトすることです。

現場の先生たち、一緒に撮影を担当するフォトグラファーたち、そして子どもたち、それぞれにリスペクトする気持ちを大切にしています。

抽象的なことかもしれませんが、子どもたちの命を預かる先生たちのお仕事には頭が下がりますし、子どもたちのピュアさや一生懸命さというのは、目を見張るものがあります。

技術的なことを言えば、「予測する洞察力」を意識しています。子どもたちの行動の二手三手先を読んで準備しておかないと、いい写真が撮れないんです。

こればかりは、現場で鍛えるしかないので、いろんな現場を経験していく中で、スキルを磨いていくしかないと思います。

Q中島さんにとって“いい写真”ってどんな写真ですか??

僕は撮る側なので、保護者とは同じ意見ではない場合もあると思いますが、ノンフィクションで、かつストーリー性のある写真を撮ってあげたいです。

写真は静止画ですが、その前後の動作も感じてもらえるような写真がいいなと思います。止まった絵の中にも、動きのあるストーリーを感じて欲しいです。

Qだからこそ、数秒先を予測する力が大切なんですね。とはいえ、なかなか難しいことですよね。

僕自身も父親なので、我が子の行動は予測しやすくて、撮りやすいというのが本音です。

ところが、フォトグラファーとして、初対面の子どもたちの行動を予測するというのはとても難しい。子育てのスキルとは別物で、プロのフォトグラファーの”技術”として必要なものだなと感じています。

とはいえ、良い写真をたくさん撮るためには、その確率を上げていくしかありません。例えば、カメラを構える際も、同じ位置に立つのではなくて、自分も移動しながら、どんどん予測して、子どもたちの“良い表情”が撮れるように工夫しています。

Qスクールフォトの魅力を教えてください!!

魅力はなんと言っても、かわいい子どもたちと同じ時を過ごせることでしょう。子どもたちの健気な姿、チャレンジする姿、その一つ一つが愛おしいと感じます。

特に卒園式なんかは、涙なしではいられません。我が子の成長を思い出したり、父親としての自分の気持ちとリンクしたりして、いろんな思いが込み上げてきて……恥ずかしながら、隠れて泣いています(笑)

スクールフォトの魅力はそこが全てだと思います。

ファインダーを通して見る子どもたちに「愛」を伝える

Qリンクエイジには「全ての愛を力に変える」というミッションがありますが、中島さんの考える「愛」について教えてください。

僕は、迷いなく答えられます。「愛」とは、「子ども」そのもの。子どもには、全ての愛が詰まっていると思います。例えば、「愛くるしい」「愛らしい」「愛嬌がある」「可愛い」など、子どもを表現する言葉に「愛」という言葉が含まれているように、たくさんの愛に包まれている存在なのではないでしょうか。

カメラがなければ、ギュッと抱きしめることで愛情表現できますが、カメラを持った僕らフォトグラファーは、それができない。ファインダーを通して子どもたちを見ている僕らが、どうやって愛情表現するの? となれば、それはもう「写真」に愛を込めるしかないと思っています。

Qこれから挑戦してみたいことはありますか??

フォトグラファーとしてのお仕事も軌道に乗ってきましたし、家族に安心してもらうための計画も、ようやくゴールが見えてきました。今後は、フォトグラファーとしての付加価値を上げていくためにも、色々なジャンルを撮れるようになりたいです。特に、スポーツ系の撮影にも挑戦していきたいです!!

それから、プライベートでは、子どもたちと一緒に旅行に行きたいです。僕ら3人に共通するのは「撮られるよりも、撮るのが好き」ということなんです(笑) いつかカメラを持って、撮影旅行に行けたらいいな〜なんて思っています。

大好きな父親と肩を並べ、夢中になってファインダーをのぞいた少年時代。

大人になった今、彼の隣には、あの頃の自分と同じキラキラした目でファインダーをのぞく息子がいる。

受け継がれたのはカメラだけではなく、尊く愛おしい”親子の時間”だったのかもしれない。

家族の愛を知った彼は、これからも写真で愛を表現し続ける。

Interviewee by Toshiharu Nakajima

Interview, Text by Miya Ando
miya_ando

Photo by Tomoshi Hasegawa

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