にこやかな笑顔から“優しさ”が溢れ出ているのはフォトグラファー伊藤正典さん、42歳。社会人になってからカメラに夢中になったという彼は、星空を撮るためにひとりで山登りをするなど、好きなものを撮ることに全力を注いできたという。そんな伊藤さんが、フォトグラファーを目指したきっかけは、愛する妻からの”ひとこと”がきっかけだったという。伊藤さんがフォトグラファーを目指した理由を語ってくれた。
満天の”星空”は最高のご褒美!! 美しい写真を撮るために、僕は追求する
大学の卒業旅行でオーストラリアへ行くことになって、「写真を撮りたいな〜」と思ったことがきっかけです。家にあったオート機能付きのデジカメを持って旅に出ました。
今の時代は、スマートフォンのカメラの性能も優れていますから、旅先での写真をスマホで済ませるという人も多いと思いますが、当時の携帯電話のカメラといえば、ほんのおまけ程度。綺麗な写真は撮れなかったので、メールや通話は携帯、写真はデジカメと使い分けている人も多かったと思います。
とても綺麗でしたよ‼︎ 海水浴もできる時期だったのに、強風が続いてしまって、仕方なくホテルにいる日もあったんですが、逆にそれがよかったのかな。ホテルから望める海岸沿いの景色を撮影したり、散歩をしながら素敵な風景を撮ったりして過ごしました。
それが写真との出会いでしたが、旅行先で綺麗な写真を撮りたいなという程度。まさかプロになろうなんて、当時は思っていませんでした。
きっかけは以前の仕事、WEBデザイナーをしていた頃に遡ります。デザインの勉強の一環で、綺麗な写真を見ることが増えてきて、「綺麗な写真だな〜」と思っていたのが、「いつか自分でも撮ってみたいな〜」という気持ちに変化してきたことが大きなきっかけになりました。
オート機能の付いたデジカメでは少し物足りないなと思うようになったのもこの頃で、思い切って一眼レフのセットを買いました。そこからカメラの魅力にハマっていきました。
一眼レフを持てばカッコいい写真が撮れるんじゃないかという期待もありましたから、綺麗な写真を撮るために、とことん追求していきたいなと思ったんです。
例えば、“星空”。夜空って普通のカメラではなかなか綺麗に撮れないものなんですが、僕は星を眺めるのが大好きなので、星空の撮影にも挑戦したかったんです。だから、美しい星空を目指して、北アルプスや富士山など、一人で機材を抱えて山登りしたこともあります。
10キロ近い荷物を運びながらの登山は苦労も多いですが、苦労を乗り越えて登った山頂で眺める星空には特別なものを感じました。満天の星空を眺めながらシャッターを切る瞬間は、“達成感”のようなものも感じて、「また次も撮ろう」という気持ちになりました。
引用:https://photorne.jp/
カメラがつないでくれた“運命の糸” 愛する妻がいてこその僕
「妻との出会い」が僕の人生を大きく変えてくれました。妻とはフォトスクールで出会いました。お互いに写真が大好きで、“カメラ”という共通の趣味があることで意気投合して結婚しましたが、“カメラが好き”という気持ちを誰よりも理解してくれたのも妻でした。
サラリーマンとして働いていた自分の中に、「プロのフォトグラファーを目指したい」という思いが芽生えてきたことを、妻はしっかりと受け止めてくれました。
結婚して家族を持とうというタイミングで、会社を辞めるなんて、普通なら理解してもらえなかったかもしれませんが、妻の方から「やりたいことをやったらいいと思う」と背中を押してくれたんです。その一言が大きな勇気になったので、会社を退職する決心ができました。
妻あっての“今”なのです。
妻と結婚して、2人の子どもにも恵まれましたが、不思議なもので、家族の写真を撮るのは妻の役目なんです。僕がカメラの設定をして、妻がシャッターを切る‼︎そんな何気ない瞬間に幸せを感じます。
最初はブライダルフォトからのスタートでした。一生に一度のイベントなので失敗はできない‼︎というプレッシャーもありましたが、新郎新婦の門出に携わらせていただくことにやりがいを感じていました。
ちょうど半年くらい経った頃、他にも色々な分野を撮影できるようになりたいなと思うようになって、視野を広げてみていたところ“スクールフォト”という分野に出会いました。
妻のお腹には1人目の子どもがいたということもあって、子どもたちの写真を撮れる仕事って素敵だなと思って挑戦してみることにしました。
最初は大阪市内の幼稚園で、運動会の練習風景の撮影でした。初めての現場とは思えないほどリラックスできていましたし、「やっと撮れるんだ〜!」という喜びの方が大きかったように思います。
子どもたちがパラバルーンの練習をしていたんですが、楽しそうな子どもたちの様子を見ていると、こちらも楽しくなってきて、夢中で撮影をしていたことを覚えています。
撮影後、先輩のフォトグラファーに写真を見てもらってフィードバックをもらったのですが、「なかなか良い写真が撮れているよ‼︎」と褒めていただくことができて、手応えを感じました。
気づけばリンクエイジとの出会いも10年目。これからもスクールフォトの分野で撮影していきたいと思います。
子どもたちが個性を100%出せる世界観でシャッターを切りたい
僕は“笑顔”でいることを大切にしています。良い写真を撮るためには、自分のベストを尽くさないといけない。僕がベストを尽くすためには、自分自身が笑顔でいることが大事なんです。
それに、突然知らないおじさんがカメラを片手に現れると、子どもたちも驚いちゃいますよね。まずは自分自身がリラックスして笑顔で接すると、そのリラックスした雰囲気が子どもたちにも伝わるので良い写真が撮れるかなと思っています。
僕の考える「良い写真」とは、「その子の個性が一番出ている写真」です。子どもたちの個性を大事にして、その個性が100%出ている写真を撮りたいなと思っています。
個性が出せるということは、より自然体でいられる環境が大切になりますから、フォトグラファーがいることで不自然になるようなことは避けなければいけません。保育の中でも、製作活動や何かの練習など、集中が必要な場面では、その雰囲気を壊さないように子どもたちとの距離を取ったりして、程良い距離感で撮影できるように工夫しています。
一方で、のびのびと遊べる自由時間などは、子どもたちの世界観にあえて入っていくこともあります。「フォトグラファーさん一緒に遊ぼう〜」なんて声をかけてくれるお子さんもいますが、僕はそれも個性だと思っていて、子どもたちの世界の中で一緒に楽しみながら撮影をすることもあります。
もちろん、その世界観というのは園の方針や雰囲気によっても違いますから、先生とのコミュニケーションを大事にしながら、子どもたちとどんな関わり方をしたら良いかということを常に考えています。
本音で言えば、子どもたちと仲良くなって撮影したいですけどね(笑)でも必ずしもそれはベストではないですから、その距離感というのは難しいと思います。
どれだけ子どもたちの世界観に入ったとしても、僕は彼らの“友達”にはなれないですから。
むしろ、先生たちにも安心してもらうことで「このフォトグラファーなら安心して撮影を任せられるな」と思っていただくことも大切だと思います。
そう思ってもらえると撮影中に声を掛けていただくことも増えて、「こちらもどうぞ撮ってください」と声掛けしていただけるようになるんです。そうすれば、自然と子どもたちとの距離が縮まっていくので、良い写真が撮れるなと思います。
そこにプロがいることの意味
僕は“笑顔”で愛を伝える“架け橋”になりたい
僕は、このスクールフォトグラファーという仕事の「プロ」としての存在意義の大きさを実感しています。
僕も2人の子どもの父親です。子どもの通う保育園では、先生たちが写真を撮ってくださるんです。先生が撮影した写真を廊下に掲示してくださるので、園での子どもたちの様子を垣間見ることができるんです。それはもう、親としてはとても嬉しいことなんです。
でも、ふと思うんです。
僕らのようなプロのフォトグラファーがいることで、もっとたくさんの写真を撮ってあげることができますし、先生のお仕事の負担も少しだけカバーできるかもしれない。そうすることで、先生たちは本業の保育にもっと専念していただけるのになと。
そして、僕自身が保護者の気持ちも分かるからこそ、「お友達とちゃんと遊んでいるのかな?」とか、「おうちでは大暴れだけど、クラスでは優しくできているのかな?」とか、保護者が心配していることに寄り添えるような写真を撮って、安心してもらいたいなと思っています。
そこに、僕らのようなプロのフォトグラファーの存在意義があると思いますし、実際に皆さんに喜んでいただけると、その存在意義を実感できるので、とてもやりがいがある仕事だなと思っています。
僕にとって愛とは、“笑顔”です。
メモリッジは「思いを伝える架け橋」というコンセプトがあると聞いています。メモリッジのロゴも一見するとスマイルのように見えますが、実は“橋”のようにも見えるんですよ。
僕はその意味にとても共感していて、僕がその“架け橋”になれたらいいなと思っているんです。
笑顔で撮影をすると、子どもたちも笑顔になって、その笑顔の写真がご家族の元に届く。そして、その写真を見たご家族が笑顔になって、笑顔が広がっていく。単純なことかもしれないけれど、笑顔というカタチで愛情が伝わっていくようなイメージです。そんな”架け橋”に僕はなりたいです。幸せの架け橋、愛の架け橋、その始まりは、全て“笑顔”からだなと思っています。
将来は自分自身のフォトスタジオを持ちたいなと思っています。それも、家族みんなが幸せになれるような、笑顔あふれるスタジオです。
スクールフォトの撮影で培った経験を活かしながら、「また伊藤さんに撮ってもらいたい」と言っていただけるようなフォトグラファーでいたいなと思います。
大好きなカメラが引き寄せてくれた“運命”。
愛する妻と共に歩む“カメラ”のある人生は、伊藤さんをより幸せへと導いてくれた。
彼は、優しい笑顔で写真を撮る。
子どもたち100%の個性が輝く瞬間、その瞬間に思いをこめて、彼は今日も「愛を届ける“架け橋”」になろうとしている。
Interviewee by Masanori Ito
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Interview, Text by Miya Ando
miya_ando
Photo by Satoshi Nakajima